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大阪高等裁判所 昭和63年(ネ)273号 判決 1988年7月13日

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴人の当審における予備的請求を棄却する。

三  当審における訴訟費用はすべて控訴人の負担とする。

事実

第一  当事者の求める裁判

一  控訴人(2項につき予備的請求の趣旨をかねる)

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は控訴人に対し、金七〇〇万円及びこれに対する昭和六〇年二月一六日から支払済みまで、年三割の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は被控訴人の負担とする。

4  2項につき仮執行の宣言。

二  被控訴人

主文同旨

第二  当事者の主張と証拠

当事者双方の主張は次のとおり付加訂正するほか原判決事実と証拠の各摘示のとおりであるからこれを引用する。

一  原判決一枚目裏末行の次に「(主位的)」を付加し、同二枚目表八行目と九行目の間に次のとおり付加挿入する。

「(予備的)

3 仮に1の本件貸借の債務者が訴外ワタナベ商事株式会社(以下「訴外会社」ともいう)であるときは、被控訴人は控訴人に対し、訴外会社の右1項の貸金債務につき、訴外会社振出にかかる額面七〇〇万円、満期昭和六〇年二月一五日の約束手形(甲一号証の一)に裏書をなすことにより、保証する旨の意思表示をなした。

よって、右2と同じ金員の支払いを求める。」

二  原判決二枚目表一〇行目の「原告の」の次に「主位的及び予備的各」を付加する。

理由

一  当裁判所も控訴人の主位的及び予備的各請求を棄却すべきものと判断するが、その理由は次のとおり付加訂正するほか原判決理由説示のとおりであるからこれを引用する。

1  原判決二枚目裏七行目の「一」の次に「まず主位的請求原因につき以下考える。」を付加し、同三枚目表七行目の「ワタナベ」から同八行目の(「)」までを「会社」と、同一二行目の「る。」を「、右貸付回数に関する控訴人の右各本人尋問結果は右証人渡辺の証言に照らし措信できない。」と各訂正し、同裏八行目と同四枚目表一〇行目の各「一か」をけずる。

2  原判決五枚目表二行目の「、被告各」を「の」と、同三行目の「する部分は」を「し、本件貸借の借主は被控訴人であり、その旨を被控訴人が右証人岡野に告げた旨の供述部分は、前認定の各貸付けに渡辺が必ず同行し、借入交渉をなしていること、控訴人が被控訴人との間で同人を借り主とすることに関するメモその他の書類を作成又は残していたことを認めるに足る証拠が全くないこと、及び前掲証人渡辺の証言、被控訴人本人の尋問結果に照らし」と各訂正する。

3  原判決五枚目表五行目と六行目の間に次のとおり付加挿入する。

「四 つぎに予備的請求原因につきみる。被控訴人が本件貸借において借主である訴外会社振出の本件手形に控訴人の求めにより第一裏書をなし、前二回についても同様の手形に控訴人の求めにより裏書をなしていることは前認定のとおりであるところ、控訴人は右裏書によって被控訴人が本件貸借上の借主訴外会社の本件貸金債務について保証をなす旨の意思表示をなした旨主張する。しかしながら何人も他人の債務を保証するにあたっては、特段の事情のない限り、その保証によって生ずる自己の責任をなるべく狭い範囲にとどめるのが通常の意思であると考えられること(最三判昭和五二年一一月一五日民集三一巻六号九〇〇頁)にかんがみ、前認定の事実関係によっても本件のように貸主であり、右裏書を求めた控訴人がどのような意思であったかは別として、裏書をする被控訴人の立場からみるときは、せいぜい、紹介者としての立場上、保証の趣旨で裏書をしたというだけにとどまり右裏書により、いわゆるかくれた手形保証の趣旨で裏書をなし手形上の債務を負担する意思をこえて、さらに利率、時効期間等で右手形上の債務より不利であることが明らかな右振出の原因となった本件貸借上の債務まで保証する意思であったと推認することは到底できず、他に右特段の事情の主張立証もない。よって、控訴人の右予備的主張は理由がなく、他に被控訴人の保証の意思表示につき主張立証がない。」

4  原判決五枚目表六行目の「四」を「五」と、同「請求は」を「主位的、予備的各請求原因はいずれも認められず、結局、右いずれの請求も」と各訂正する。

二  以上の次第で本訴主位的請求を棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がなく棄却さるべく、また、当審における前記予備的請求も棄却を免れない。

よって、民訴法三八四条、九五条、八九条により主文のとおり判決する。

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